青年Hさん、初めての来訪です。絵を描きたいと思ったのは、ほんの数ヶ月前ということでした。(そんなフレッシュな感覚で、ウチのアトリエに来ていただいたんですね!)
上手くなりたくて、でもどうしていいか、わからない。YouTubeでデッサンの動画とか参考にして描いてみたけれども。実際に人を見て、デッサンしたりしてみたけれども。これが役に立っていくのだろうか?というお話だったと思います。
描いている絵を少し見せてくれました。デッサンというものを始めて、本当にまもなくの感じ。私も高校生の頃描いてたような絵です。懐かしい感じ、しました。
でも、美大に行くためにするような石膏や、静物のデッサンは、役に立つのか?というと私の場合、ムダではなかったと思う、けれども。
「予備校って、どんなことするんですか?」という質問に、答えてみました。最初は1日6時間の石膏デッサンを週に3日。残り3日は油絵の静物とか人体とかを6時間。夏までは、6日間でそれぞれ1枚を描く。夏過ぎには、3日で1枚描く。9月くらいまでは、みんな下手くそだから、来年は誰も合格しないんじゃないかと、先生は思うんだって。それが、11月くらいになると、急に化ける、と予備校の先生は言ってました。
何が起きていたか思い返すと毎日6時間も描いてると、自分の知ってる描き方だけでは、役にたたないのがわかってくる。ていうか、やれることを全部やって、歯が立たないので「どうして私の絵は変なんでしょう?」と先生に聞く。すると、描けていないところを指摘される。というやりとりを連日繰り返して、変なところを自分で見つけて修正できるようになっていく。そんなことを1年続けてたのでした。
でも、その技術がないと絵が描けないってことではない。技術のなさをいろんな工夫でカバーして、見てる人が違和感を感じなかったら、なんにも問題はない。だから、どこが変なんだろう?と思ったら、大好きな漫画家や画家の絵と比べてみたら、いろいろわかってくると思う。
Hさんの絵は、これから始まるところ。まずは、大好きな絵をマネをしてみるのは?とお勧めしました。自分で描いた絵のイマイチなところ。それをカッコよく描けてる作家さんがいたら、そこをよーく見てみる。描いてみる。
どうやって描いてるんだろう、これは?!これはなんでカッコイイのか?!こんな素敵な色の組み合わせってなに?!とか、出会うたびに、感動しながらヒントをもらう。これは、楽しいですよ。
美大に行くようなデッサンをあれこれやるよりも、気に入った絵に出会っていくほうが何倍か楽しい。私の場合、好きではないけど技術習得のためと思ってデッサンをやっていたら、自分の好きな絵がわからなくなってしまったので。
描きたいものを表現する、というより欠点を修正していくことの方を優先して描く、という習性が身についてしまって困った。そう言ってた友人は何人もいました。何事もムリは禁物とはよく聞きますが、ムリと思わず、必要な道と思ってがんばってしまったのですよ。せっかくできるようになったものを、手放すのはなかなかできなくて、その後、抜け出すのに苦労しました。
Hさんに手元にあった絵本や画集をお見せして、いわゆるデッサンとはちがう、というか、その先を表現している絵を紹介しました。どの画集を開いても、とても集中して見ておられました。静かに感動しているのも伝わってきます。
●リアルな風景、人物を描きながら深い情景の、アンドリュー・ワイエス。
●ファンタジーなのに深いリアルな手触りのある絵本、「青猫島コスモス紀」ますむらひろし。
●手の表現がすばらしい絵本「ネコのマッサージのしかた」アリス・M・ブロック。
●70才で絵筆を持って風景と人の暮らしを描いた、グランマ・モーゼスの画集。
Hさん、時々、「すごい・・・」と言いながら、画集を見ています。何か大事なものに出会ったときは、時間が止まる感じがしますが、そんな雰囲気でした。
こんな話の合間に、ちょっと絵を描いてもらいました。ヒト型のぬり絵と図形を塗って自分を描いてみる。自分の感覚を遊ぶのは遠慮がちな感じでした。
そうですよね。今回は上手くなりたくて、でもどうしていいか、わからない。というのがテーマでした。そこに向けて、出来るだけ使えるお話をしようと思いましたが、どうだったでしょうか。描いた絵の実物を持って来てもらえたら、また、いろいろお話ができると思います。具体的で実用的な話は、そのあたりから始まると思います。
自分の絵が思うように描けたとき、
じわっと楽しくてうれしいですよ💗。
そんな手ごたえを、たくさん味わっていかれますように。
絵-1
すごく遠慮がちに、色鉛筆を使ってます。とても慎重に、そっと色を塗っている感じでした。表現したいというよりも、もしかしたらはっきりさせたくないのかな?と思いました。この辺を聞いてみたらよかった、と後で思いました。どうしたらいいかわからない、という気持ちの中で、描くのはなかなか大変だったと思います。お疲れさまでした!
絵-2
いい絵は、古くならない。いつ見ても、新鮮なのでした。
